「詠懐詩」における回想の手法
阮籍の「詠懐詩」八二首は、作者の胸奥に抱え込まれた憂愁を陰影深く詠じた詩群であり、漢詩が急激に発達した魏晋六朝期を代表する傑作である。この詩群についての研究はそれらに潜められた作者の内面に対する検討が主流であったが、本稿では回想という表現のパターンに着目し、その同時代における表現史的意義と、それが後代に受容され、やがて盛唐の杜甫によって切り拓かれる自伝詩の文学的土壌と化してゆく過程を解明した。
東方学
第141輯