恋ふこと・思ふこと―万葉集におけるその連関―
『万葉集』における「恋ふ」と「思ふ」の語の意味的差異と連関を考察する。「思ふ」は現実との乖離に苦しむ主体の能動的希求を示し、「恋ふ」はその希求が届かぬことによって生じる感情の発露である。一首内で両語が併用される際には、「思ふ」が「恋ふ」を誘発し、「恋ふ」が「思ふ」を増幅するという表現上の連鎖が見られる。この連鎖の分析を通じて、古代の恋歌における感情表現の構造を明らかにした。
『三田國文』
慶應義塾大学国文学研究室(『国文学年次別論文集』学術刊行会・収載)
27号
10.14991/002.19980300-0001
https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php/AN00296083-19980300-0001.pdf?file_id=29811